◆ロシアによるウクライナ侵攻(約8ヵ月が経過)に伴ってエネルギー・食品価格が高止まり、高インフレ状況の長期化やエネルギー供給への懸念は企業の生産活動や家計の消費行動に重くのしかかっている。金利上昇という新たな要因も加わり、2023年の欧州経済見通しの下方修正が続いている。
◆本格的な冬の寒さを前に、世論の反発をかわしたい各国政府は家計や企業向けの支援策に力を入れている。だが、その規模が過大で、内容が現状に即さないものであると、内外から様々な批判を浴びてしまう。ドイツと英国がその代表例だが、財政的に余裕のあるドイツの場合、巨額な支援策はEU内の競争を歪めて不均衡を招くと批判を受ける。英国では、新政権の経済対策が借金で賄われるという点だけでなく、富裕層向けの減税というピント外れな内容も盛り込まれたことから、世論の歓心を得るはずの対策が、むしろ世論の反発を招き、金融市場からはトリプル安の制裁を浴びた。結局、トラス政権はほぼ白紙撤回に追い込まれ、金利の高止まりと下げ止まらない支持率というレガシーが残った。
◆英国のケースはやや極端だが、高インフレを抑制するために中央銀行が利上げを継続する横で、需要を喚起してしまう財政政策を実行することは、インフレ率に与える影響を考えると、どうバランスを取るかが難しい。